The Japanese Overseas Investment Report 2017: Thailand (Japanese version)
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The Japanese Overseas Investment Report 2017: Thailand (Japanese version)

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タイ王国


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SECTION 1: 市場見通し

1.1 日本の企業文化の影響に対するあなたの国の姿勢を要約してください。

1980年代から1990年代にかけて日本企業の進出が本格化して以来、日本からの投資はタイ経済の発展に重要な役割を果たしています。1981年以降、日本はタイ最大の投資国になっています。タイ銀行(BOT)の統計によると、2015年のタイに対する日本からの直接投資(FDI)は30.3億ドルに達しています。タイでの投資を支援するタイ国投資委員会(BOI)が公開した最新のデータによると、2016年1月から12月までの日本のFDIは771.4億バーツ(22億ドル)でした。同時期にBOIは日本の投資家が関係する優遇処置申請を262件承認しましたが、この数字は外国からの申請の31%を占めています。タイにおける日本の投資は活発で、タイ政府はタイ経済に対する日本の重要性を十分に認識しています。

1.2 今後12ヶ月における日本からあなたの国への投資の見通しは?

良好です。特に特定の分野で積極的な投資が見込まれます。政府の予測では、2017年のタイ経済の成長率は全体で3%から4%とされています。従来のBOIの推進活動に加え、タイを高所得国に発展させる新しい重要なイニシアイブが始まりました。重要政策であるタイ4.0(2017年1月)では、イノベーション、技術、創造性、サービス取引に重点が置かれています。これらの項目はコア技術と応用サービスに分かれます。コア技術にはバイオテクノロジとデジタル技術が入り、応用サービスには調査研究、テクノロジ、デザインが入ります。これらの分野の潜在的投資家に対しては、最大10年間の法人税の免除も検討されています。

タイは、CMLV(カンボジア、ミャンマー、ラオス、ベトナム)の製造業とロジスティックのハブとなることを目指しています。この目標を達し、タイ4.0を推進するため、タイ政府は2.2兆バーツ規模のインフラ整備プロジェクトを計画しています。この計画には、大量高速輸送システム、高速/複線鉄道、既存の空港/港湾設備の拡張などが含まれています。

SECTION 2: 外国投資の承認

2.1 外国資本投資の認可プロセスとスケジュールを説明してください。

タイでは、タイの経済と社会の発展に重要かつ有益と見なされる特定の業種に対して投資奨励制度を実施しています。これまでにも製造業に対する奨励策が雇用の拡大につながり、タイの自動車産業とエレクトロニクス業界が発展しました。タイ4.0では、新しい技術や環境に配慮した活動を提供する高付加価値産業に重点がシフトしています。

この投資推進を担当する政府機関はBOIとタイ工業団地公社(IEAT)です。

BOI投資恩典 - 対象となる企業はタイ国内の企業です。外国の投資家は、BOIが認可した業種(製造業など)のタイ企業の株式をすべてまたは大半を所有できます。農業、漁業、工業、特定のサービスなどの業種では、外国資本の持ち株比率は49%までに制限されています。投資恩典の内容は事業内容(業種別)や場所(地域別)によって異なりますが、いずれの場合も税の優遇処置を受けることができます(詳細はセクション6.3を参照)。税制以外の優遇(土地所得、ビザの緩和、外国人労働者の労働許可)や投資保護はありません。

申請プロセスでは、標準の申請書をBOIに送付します。送付から審査が完了するまでに40~90営業日ほどかかります。プロジェクトが承認されると、BOIは所定の規制遵守を条件として奨励証書を発行します。

申請者は、申請前にBOIの担当者と打ち合わせを行い、申請内容を協議することをお勧めします。土地所有の許可は通常、承認後に行われます。

IEAT投資恩典 - IEATは、特定の工業団地に入居する事業者に対して恩典を与えています。IEATが管理する工業団地だけでなく、民間の開発業者が所有・管理している工業団地も対象となる場合があります。税以外の恩典として、工業団地内での土地の所有、ビザの緩和、外国人技師とその家族に対する労働許可の発行、本国へ外貨送金などがあります。フリーゾーンに入居する投資家には、機械および原材料に対する輸入税、物品税、付加価値税が免除されます。自社工場の建設または運営を検討している場合には、IEATが必要な許可の取得を支援します。

2.2 特に規制されている分野での投資の制限はありますか?また、政府はそれらの分野に於ける特別な権限を有していますか?

はい。エネルギー、電気通信、天然資源などの業種は外国資本の参入が規制されているか、法律で定められた機関の認可を受ける必要があります。たとえば、電気通信の場合、NRA組織法に基づき国家放送通信委員会が設立され、周波数の割り当てだけでなく、電気通信業界の新規参入と事業継承の認可を行っています。

外国人事業法(FBA)(以下の2.4を参照)の一般規定で特定の業種に対する外国資本の参入を制限していますが、これ以外にも産業および業種固有の法規制で外国資本の制約が規定されている場合があります。投資を行う場合には、意思決定を行う前に、現地の適切な弁護士に相談し、適用される可能性がある規制について詳細を確認するべきです。

2.3 どの機関が競争承認を監督していますか?また、合併承認のプロセスの概要を説明してください。

1999年取引競争法(TCA)に基づき、取引競争委員会(TCC)がタイでのM&Aを監督しています。合併の結果、独占的行為および不公正な事業競争が発生する可能性があると、TCCはタイ企業または外国企業に関連する合併を認可しない場合があります。水平、垂直、複合かどうかに関わらず、合併がTCCの定める最小要件に該当することが通知された場合には、TCCの認可を受ける必要があります。現時点で、最小要件または基本プロセスを指定する通知は発行されていません。このため、現段階ではTCCから承認を得る必要はありません。まもなく改訂が行われる可能性があります。

2.4 他に外国投資家が気をつけるべき認可要件はありますか?

外国人事業法(FBA)は主に、外国人がタイで従事可能な業種を判断します。FBAでは、活動を3種類のリストに分類されています。このリストには、外国資本の参入を完全に禁止している活動が記述されています。これらの活動を行うには、免責許可または事業認可のいずれかを取得する必要があります。タイ以外の企業が株式の50%以上を取得している場合、この企業は外資企業となります。タイの企業が株式の半数以上を取得しているジョイントベンダーは外国企業に分類されません。FBAの制限も受けません。

第1種の業種には外国資本の参入が完全に禁止されています(出版、不動産取引、稲作など)。第2種の業種は、輸送、芸術文化、環境や天然資源に影響を及ぼす事業で、内閣の承認が必要になります。第3種の業種は、外国企業と比べて国内産業の競争力がまだ弱いとされる事業で、仲介・代理業、卸売業、小売業、サービス業などが含まれます。外国資本が第3種の業種を行う場合には、免除または認可が必要です。必要な認可としては、商務省(MOC)が発行する外国人事業許可(FBL)、タイ米友好条約による免除(米国民、米国企業が対象)、BOI投資恩典などがあります。日本の投資家の場合、日タイ経済提携協定(JTEPA)に基づき規制が緩和されています。特定の条件に基づいて日本人が特定の卸売業、小売業、サービス業に従事する場合、持株比率の制限が緩和されます。

外国人は、タイで登記された法人(公開会社または非公開会社)の株式を49%以上取得することが禁止されています。多くの場合、上場企業では外国人株主に制限事項があります。

SECTION 3: 投資技術

3.1 あなたの国で日本からの投資に使われる最も一般的な法人形態は何ですか?

タイの民間企業で最も一般的な形態態は有限責任会社または法人です。法人は、株主とは別個の法的組織体です。体制と組織の点では、西欧諸国の会社と類似しています。非公開企業の株主責任は、株主が保有している株式の未払資本金に限定されます。経営権が承認された役員は、公開の宣誓供述書に記載されます。この供述書には登記資本金と事業目的が記述されています。

外国資本と現地パートナーの非公開ジョイントベンチャーは通常、法人によって運営され、現地では単にジョイントベンチャー(JV)と言われています。法人によって運営されていないJVは法的主体とは見なされませんが、特定のプロジェクト(通常、建設プロジェクト)を実施するために組織されたJVは、歳入法で課税対象として扱われる場合があります。

タイの法律では、支店、駐在員事務所、地域事務所、財務センター、パートナーシップ、個人事業も認められています。支店は、政府との契約業務を遂行するために設立される場合があります。支店は本社に従属し、支店の責任は本社が負うものと見なされます。また、支店で遂行する業務が制限対象の場合(2.4を参照)、FBLなどの認可が必要になります。駐在員事務所と地域事務所はともに非営利活動を行う事務所と見なされ、営業活動は禁止されています。いずれも取引行為が制限されています。

大規模なインフラ整備プロジェクトや国家事業に対する民間投資の場合には、官民パートナーシップが使用されます。

3.2 これらの法人形態の設立と事業活動にとって重要な必要条件とは?

持株比率は、当該事業に適用される外国人の株式取得制限に応じて構成する必要があります。たとえば、製造業の場合、外国資本が100%株式を所有できますが、他の業種の場合、過半数を持つことはできません。投資を適切に配分するため、実施事業の計画段階で法的な助言を受けることが重要になります。

SECTION 4: 紛争解決

4.1 現地の裁判所の施行と紛争解決の訴訟手続はどれくらい効果的であるのか?また、日本の投資家が特に気をつけるべき点とは?

訴訟を行う場合、所定の形式で訴状を提出し、訴訟費用を支払います。訴状が受理されると、裁判所から被告に送付されます。被告は、15~30日以内に答弁書を提出する必要があります(期間の延長も認められています)。裁判所が口頭弁論期日を指定します。裁判所から和解が勧められる場合もあります。和解が成立しなかった場合、口頭弁論が約8~12か月にわたって行われます。訴訟手続を始めてから下級裁判所で判決が下るまで平均で12~18か月ほどかかります。ただし、訴訟内容等により、判決までさらに時間がかかる場合があります。民事裁判の判決は上級裁判所に控訴できます。最終的な判決が下ると、執行手続が開始します。任命された執行人が、債務者の資産に対して判決を執行します。債務者資産の差し押さえは判決債権者が行います。タイの裁判所では、債務者に対して資産の詳細開示を強制しないため、法的強制力が適用されない場合もあります。

仲裁手続は、UNCITRAL国際商事仲裁モデル法に従って行われます。一般に、仲裁手続は訴訟手続よりも簡単になります。仲裁判断を執行する場合、執行を求める当事者が所定の期間内に裁判所に請願する必要があります。請願から執行手続が完了するまでに12~18か月かかります。

日本と現地の投資家の間で締結された民間の契約はタイの法律で扱われることなく、外国で仲裁が行われます。地理的に近いため、外国での仲裁はシンガポールまたは香港で行われます。タイ政府との契約では、管轄裁判所としてタイの裁判所が指定されています。日本の投資家は、訴訟の内容に応じて期間制限が1か月から10年に及ぶ場合があることに注意する必要があります。これはタイの法律で技術的な領域で、できるだけ早い段階で専門家の助言を受ける必要があります。特に、労使紛争では、関係するすべての役員と管理者が裁判に出席しなければならないこともあります。役員と管理者を任命する場合には、この点を念頭に置いておく必要があります。

4.2 あなたの国では日本との二国間投資保護協定を締結していますか?また、投資家によってその協定は一般的に活用されていますか?

2007年の日タイ経済連携協定(JTEPA)は二国間の自由貿易協定で、両国間で取引される製品の関税を低くすることを目的としています。また、追加条項により、市民の知的財産権の保護と不正競争の防止を規定しています。JTEPAとの関連はありませんが、BOIの推進活動に認定されたプロジェクトは、タイ投資委員会法に基づき、特定の投資保護の対象となります。この中には、収用、競争、独占状態、価格統制からの保護も含まれます。

4.3 現地の裁判所は外国の判定を尊重していますか?また、国際仲裁判断は法的効力がありますか?

タイは、外国裁判判決の施行に関する条約を批准していません。このため、タイの裁判所で外国裁判判決は施行されませんが、証拠としては認められます。

タイは、任意の外国仲裁判断の執行に関するジュネーブ条約と外国仲裁判断の承認・執行に関するニューヨーク条約を批准しています。所定の期間内に行政裁判所に訴訟手続を行った場合、これらの条約に基づき仲裁判断は法的効力があると見なされます。

SECTION 5: 外国為替規制と現地のオペレーション

5.1 外国の投資家が留意すべき外貨と為替制限は?

外貨を一定期間預金または販売できる場合、タイへの外貨送金に関する制約はありません。外国送金や外貨の購入は、さまざまな商業取引の決済を許可するタイ銀行の承認が必要です。借款返済、利息の支払い、投資資金の本国送金、配当に関連する取引で、原因取引が本物で、適切な文書が添付されている場合には、このような承認は地元の商業銀行で定期的に行われています。借款返済と本国送金の場合、借款または投資に使用した資金が元々タイに送金されたものであることを証明する必要があります。

SECTION 6: 税務上の影響

6.1 日本の投資家にとって特に役に立つ有益な税の仲介法域または税制はありますか?

タイ国での投資に対する税対策は、タイ国ではなく日本の税制が問題になります。多くの場合、二重課税を回避するため、中間持株会社を使用して日本から直接投資が行われています。

日本の税制に相当する箇所がある場合、特定の目的を達成するために、中間の管轄区域が経由される場合があります。いくつかの管轄区域は、タイ国と租税協定を締結し、特定の状況で配当またはキャピタルゲインの税率を引き下げています。このような管轄区域として、台湾、シンガポール、モーリシャス、UAEがあります。香港もタイ国と租税協定を締結しています。税制上の利点から経由地として使用される場合があります。

6.2 配当に対する法人税と源泉課税の適用率はどのくらいですか?

法人税の法定税率は20%です。配当に対する源泉税率は10%です。利息とロイヤリティに対しては、15%の源泉税が課税されます。タイで発生したキャピタルゲインまたはタイから支払われたキャピタルゲインにも15%の源泉税が課税されます。

6.3 政府は税制上の優遇措置を構築していますか?

事業内容および所在地によって異なりますが、BOIに関連する税優遇処置としては、最大8年間の法人税の免除、特別税額控除、輸入税の免除などがあります。

推進分野としては、研究開発、知的財産のライセンス、製品/パッケージのデザインなどがあります。地域別恩典は、工業地域と工業団地、ハイテクパーク、低所得地域、タイ南部の国境地域、経済特区などに対応しています。BOIでは、クタスター型の経済開発計画を策定し、特定業種の製造地域を指定しています。これらの業種としては、自動車、電子機器、デジタル産業、医療機器が対象となっています。

法人税の優遇処置は、国際地域統括本部、国際貿易センター、財務センターにも適用されます。海外駐在員にも個人所得の控除が適用されます。

6.4 あなたの国と日本との間で相互的な租税協定はありますか?あればそれは投資家にとってどのような助けとなりますか?

日本とタイ国の間で包括的な租税協定が締結されています。ただし、この協定では、配当、利息、ロイヤルティに対する源泉税に対して、タイ国内法に相当する減税は規定されていません。日本で発生したキャピタルゲインもタイ国の税法の対象となります。JTEPAは、2017年内に二国間貿易の90%以上で関税を撤廃することを目標としています。

著者略歴

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ピーター・バーク
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ピーター・バークはAxis Legalのパートナーで、20年以上にわたり、日本と多国籍企業の顧客にタイでのビジネスコンサルティングを行っています。企業法務とM&A分野を専門とし、ジョイントベンチャー、廃業、企業再建、 外国投資、商業問題全般、コーポレートガバナンス、タイでの投資に関する助言を様々な企業に行ってきました。


ナッタ・スリソムワン

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ナッタ・スリソムワンは公証人サービスの弁護士で、タイと外国の顧客にタイの企業法と商法に関する様々な助言を行っています。2012年にタンマサート大学で企業法(英語)の修士号を取得し、社内コンサルタントまたは法律事務所で8年間の経験を有しています。専門は企業法務とM&Aで、海外投資、外国での事業許可の申請、タイ国投資委員会やタイ工業団地公社の投資恩典に関する助言を行っています。


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