The Japanese Overseas Investment Report 2017: United Arab Emirates (Japanese version)

Author: | Published: 29 Mar 2017
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アラブ首長国連邦

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SECTION 1: 市場見通し

1.1 日本の企業文化の影響に対するあなたの国の姿勢を要約してください。

残業や限られた休暇、業務上細心の注意を払うといった点は日本の企業文化といえるが、アラブ首長国連邦(以下UAE)において、これらを自社オフィス・工場等の職場へ導入することの困難さを、日本企業は日々体感しているといえる。

特に、UAEでは残業を当然とする文化がなく、多くの従業員は毎年最長1ヶ月までの長期有給休暇の取得を前提としている。労働法では、残業の制限と30日間の年次有給休暇全取得の両方を奨励している。また、業務上で細心の注意を払い、正確性を高めることを重視していない。しかしながら、日本企業は、多様で大量の労働力を供給しやすいことから、UAEでのビジネスで成功を収めることが期待される。

UAEは、民間セクターにおいて、99%以上の従業員が外国籍であるという点で独特である。 日本企業は、他の中東、南アジア、東南アジア諸国以上に多様な従業員を管理できるよう心構えが必要である。一方、経営側と従業員の間で職場での共通の認識を持つ為に、詳細な就業規則およびその他諸規定一式を定めることが重要である。

1.2 今後1 2ヶ月における日本からあなたの国への投資の見通しは?

UAEは、7つの首長国から成る連合体である。ドバイは、言うまでもなく中東地域のハブとなる商業都市であるのに対し、首都アブダビは連邦政府の所在地であり、石油、天然ガス資源が豊富にある。

ドバイには約300社の日本企業が拠点を置き、中東・アフリカ地域における日系ビジネスに大きく焦点を合わせている。アブダビには約70社の日本企業が存在し、アブダビ首長国内での業務、プロジェクトに特化している。その他5つの北部首長国(シャルジャ、ラアス・アル=ハイマ、フジャイラ、アジュマン、ウンム・アル=カイワイン)の面積は、UAE全体の10%以下であるが、ラアス・アル=ハイマとシャルジャの2首長国には、日本企業数社の貿易や製造施設がある。

ドバイは、日本の多国籍企業が中東地域での拠点を設けるにあたり、好ましい都市と考えられている。ドバイに拠点を置く日本企業の中には、中東、アフリカ、南西アジア、中央アジアにわたり80以上もの国を網羅している例もある。

アブダビは、石油・天然ガス経済において長期にわたり安定した利益を得ていることもあり、特定の契約またはプロジェクト履行以外での日本からの新規参入企業が少ないといえる。

北部首長国は、比較的低コストで製造施設が設置できる場所であると考える日本企業もある。

SECTION 2: 外国投資の承認

2.1 外国資本投資の認可プロセスとスケジュールを説明してください。

フリーゾーンでは、外国資本による直接投資の認可手続は、それほど複雑ではない。一般的に認可申請はフリーゾーン庁に対してのみ行い、その他政府機関(UAE本土のものを含む。)の認可は要件とされない。(2.4に記載されている特定業種に対する幾つかの連邦政府の認可を除く。)

ドバイの領土の狭さと200万人という少ない人口にもかかわらず、市内には30以上のフリーゾーンがあり、各フリーゾーン毎に、事業設立・運営に関する特有の法規則および一定の司法権を有している。併せて、国土の殆どを占めるUAE本土(フリーゾーン外)があり、そこではUAE本土(ドバイの場合はドバイ首長国)の法規則、手続が適用される。

なお、フリーゾーンで登録された企業は、そのフリーゾーン以外では事業を行うことができない。

フリーゾーンでは、一般的に外国資本の対内投資の上限を設定していない。また、UAE本土と同様、法人税がなく外国人雇用の割合に上限がない。ドバイにおけるフリーゾーンの多くの日本企業の支店・現地法人は、ジェベル・アリ港に囲まれたジェベル・アリ・フリーゾーン(JAFZ)または、ドバイ国際空港に隣接するドバイ空港フリーゾーン(DAFZ)に設けられている。

フリーゾーン法人は、UAE本土で商業取引を行うことができないと定められている。UAE本土で事業を行うには、外国企業の支店または有限責任法人(LLC)といったUAE本土の会社を設立・登録しなければならない。エンジニアリング・建設業および物流・小売業は、LLCを設立することが多い。UAE本土におけるLLCにおける外国資本の割合は最大49%と制限されており、51%以上の資本はUAE国民保有であることが要件とされている。

フリーゾーン外では、外国企業の支店もしくはLLC設置の際、UAE経済省および各首長国の経済開発局を通して申請を行う。

2.2 特に規制されている分野での投資の制限はありますか?また、政府はそれらの分野に於ける特別な権限を有していますか?

フリーゾーン外では、全般的に外国資本の割合は最大49%と制限されており、51%以上の資本は、UAE国民保有であることが要件とされている。

銀行、金融、電気通信、製薬、メディア等の連邦政府による規制を受ける業種を除き、原則として外国資本参入を妨げる規制はない。

UAE中央銀行の認可を要する銀行業と金融業においては、外国資本による株式保有の上限は普通株式の40%とされる。

保険会社においては、外国資本による株式保有の上限は25%と定められている。

人材サービス業や不動産仲介業などの業種への外国資本参入は、禁止されている。

天然資源の開発は、連邦政府によって付与された権益に従う。これらの権益の多くは、この分野で開発経験・能力があると証明された外国企業にのみ付与される。

現在では、多くの外国企業が通信機器・設備の提供により、電気通信事業に参入しているが、電気通信事業会社としてのライセンスを保有するのは、エティサラートとデュー(Du)という国内企業2社のみである。

2.3 どの機関が競争承認を監督していますか?また、合併承認のプロセスの概要を説明してください。

2012年にUAE競争防止法が導入されたが、対内投資の競争防止の観点から精査している段階であり、まだ堅固なシステムは整っていない。合併および外国資本の参入は、一般的に競争防止法認可申請の対象とされていない。

2.4 他に外国投資家が気をつけるべき認可要件はありますか?

外国資本による資本の保有率にかかわらず、全ての企業は、その業種を事業内容として新規事業を設立するためには、監督官庁の事前認可を得なければならない。一般的に、認可は事業運営における法的要件を満たす能力が企業にあるかどうかという点と関係している。

連邦政府レベルでは、以下の承認が求められる。

  • ドバイ国際金融センター(DIFC)以外での金融業における全ての銀行業務にかかるUAE中央銀行の承認
  • 財務分析、金融コンサルタント業務、株式と債券の仲介業務に対するUAE証券・商品委員会(SCA)の承認
  • 保険会社、保険仲介業者、代理人に対するUAE保険局の承認
  • 電気通信機器の輸入販売に対する電気通信規制局(TRA)の承認
  • 医療品、化粧品の製造販売に対する保健省の承認
  • 全てのメディア、出版、印刷、広告、撮影、放送、芸術製作に対する国立メディア会議の承認

首長国レベルでの、監督省庁の承認が必要な事業分野は以下のとおりである。

教育、観光事業、接客事業、食品加工業務、食品サービス業、個人のセキュリティ、ヘルスケア、不動産仲介業、石油探索・開発業、タクシー・輸送サービス、建設窓口、エンジニアリングコンサルタント業。監督官庁あるいは部署は、各首長国によって異なる。

SECTION 3: 投資技術

3.1 あなたの国で日本からの投資に使われる最も一般的な法人形態は何ですか?

UAEを拠点とする日本企業は、以下の事業形態を用いるのが一般的である。

  • フリーゾーンの多くは、ドバイおよび北部首長国に所在しているが、そのうちの1つにフリーゾーン法人を設立する。各フリーゾーンによって法人設立形態は異なるが、一般的な形態として、フリーゾーンエスタブリッシュメント(FZE)、フリーゾーンカンパニー(FZCO)、フリーゾーンLLC(FZ-LLC)が挙げられる。
  • アブダビのフリーゾーンは少なく、その活動範囲も限定されている。したかって、アブダビでは外国企業の支店の設置が最も一般的であり、アブダビにおける日系企業の90%は、この形態で事業を展開している。支店の登録上での外国資本割合の上限はないが、UAE国民またはUAE国民が100%所有する法人が、支店設置地における国民代理人(スポンサー)としての役割を果たさなければならない。
  • 建設、エンジニアリング、小売、貿易、輸送に携わる企業は、フリーゾーン内ではなくUAE本土に所在しなければならない。これには、UAE商業会社法上のLLCを設立する方法が最も一般的である。前述のとおり、LLC株式の51%以上は、UAE国民またはUAE国民により100%所有される法人による保有が要件である。

重要な点として、UAE国民の株主の積極的な経営参加なく、外国投資家がUAE本土企業の経営を管理でき、UAE国民株主には単に手数料を支払うという、名義貸しシステムがある。しかしながら、UAE国民株主は、その株主権を外国株主に完全に移譲することはできない。また、名義貸しは、UAE国民の株主権の制限を禁止する法律に違反しないよう注意して策定されなければならない。

3.2 これらの法人形態の設立と事業活動にとって重要な必要条件とは?

申請手続は煩雑であるが、専門のアドバイザーが担当すれば、それほど難しくはない。

まず、会社名の確保およびその他重要な点の仮登録をするために、該当する監督省庁(フリーゾーン庁、経済開発局または経済省)に事前申込みを行う。

提出書類は、日本企業の場合、定款と登記簿謄本の英訳を準備し、現地法人登録手続の際、UAEでの手続を代理する代理人を指名し、会社設立や株式取得を許可する内容の取締役(または株主)決議書を作成する。UAEは外国公文書の認証を不要とする条約(ハーグ条約)を締結していないため、これらの提出書類は、日本の公証人の認証および外務省による公印確認を受けたのち、東京都の在日本UAE大使館で公証を受ける。

そのうえで、上記提出書類をUAEの代理人に送付し、UAE国内での認証を経て、有資格の法律文書翻訳者によって、英語からアラビア語に翻訳される。

設立される法人の定款は、UAE内の公証人役場にて認証され、経済開発局(フリーゾーン法人の場合は、フリーゾーン庁での面前署名のうえフリーゾーン庁)に提出される。UAE本土のLLCの場合、取締役会による全役員任命権や重要な議題に対する拒否権、配当請求権の強化(利益の80%が49%の外国株主へ分配可能など)等の防御策が定款に埋め込まれることもある。また、UAE国民のパートナーを含む株主の間で、株主間契約を結ぶことも望ましい。

新法人は、その事務所を確保、登記しない限り、設立手続を完了させることができない。法人設立は、実体のある事務所の賃貸借契約締結および一定の事務所設備の設置を要件とし、単に所在地を記載するだけでは法人登録は許可されない。

上記全必要書類が提出された後に新法人の会社登録が完了する。法人設立の完了を証するものとして、その法人が許可された商業活動が記された商業ライセンスが発行される。

会社設立後に行う主な業務としては、銀行口座の開設と私書箱の登録がある。

SECTION 4: 紛争解決

4.1 現地の裁判所の施行と紛争解決の訴訟手続はどれくらい効果的であるのか?また、日本の投資家が特に気をつけるべき点とは?

民事訴訟に関する法律はUAE全土で共通しているが、アブダビを含む5つの首長国は連邦裁判システム、ドバイとラアス・アル=ハイマ首長国は独自の裁判システムを採用している。裁判所は、第一審裁判所、控訴審裁判所、破毀院または最高裁判所に分かれている。

UAE本土の裁判所は民法システムに従い、アラビア語での訴答書面に基づいている。外部の専門家や監査は訴訟プロセスの中で重要な役割を果たす。

ドバイの裁判所は、一般的に外国投資家に対して公正であると認識されており、UAE国民に特段有利に働くことはない。

ドバイ国際金融センター内には独自のコモン・ロー裁判所があり、DIFC内外で署名された一定の商事契約の管轄裁判所として、指定することができる。

4.2 あなたの国では日本との二国間投資保護協定を締結していますか?また、投資家によってその協定は一般的に活用されていますか?

UAEと日本の間には二国間投資協定は締結されていない。

4.3 現地の裁判所は外国の判定を尊重していますか?また、国際仲裁判断は法的効力がありますか?

幾つかの国際条約に基づき、国際仲裁判断は法的効力を有するが、最も注目すべきは、2006年にUAEが締結したニューヨーク条約である。

外国での判定は、以下の条件が全て満たされた場合において、法的効力を発する。

  • 判定または命令が下された係争にかかり、UAEの裁判所が裁判権を有しない場合
  • 外国の裁判所が裁判権を有する場合
  • 訴訟における相手方に出頭命令が下され、正式に出頭している場合
  • 判定が最終であり上訴しない場合
  • 以前にUAEの裁判所から発せられた判定または命令と対立しない場合
  • 判定がUAEの公衆の道徳または社会秩序に違反しない場合

SECTION 5: 外国為替規制と現地のオペレーション

5.1 外国の投資家が留意すべき外貨と為替制限は?

外貨規制はない。

米ドルとUAEディルハム(AED)との間の為替レートは、$1 = AED3.673に固定されている。

SECTION 6: 税務上の影響

6.1 日本の投資家にとって特に役に立つ有益な税の仲介法域または税制はありますか?

UAEは、日本の税法上で租税回避国と指定されている。しかしながら、日本の近年における税法自由化を受けて、一般的に日本の税務アドバイザーは、オランダ経由での(以前はこれが望ましい選択肢であったが)日本からUAEへの大規模な投資を推奨していない。

6.2 配当に対する法人税と源泉課税の適用率はどのくらいですか?

石油・天然ガス生産業および外国銀行のUAE支店を除き、現在UAEには法人税がない。また、源泉課税もない。

通常、株式配当または利益の配分を承認するためには、株主決議を必要とする。フリーゾーン法人は、前記の事項にかかり、フリーゾーン庁に株主決議書を提出することを求められる。さらに、配当金を支払う前に、フリーゾーン庁への株主決議書を提出済である旨の証明を銀行から求められることがある。

なお、2018年1月より5%の付加価値税が導入されることが提案されている。

6.3 政府は税制上の優遇措置を構築していますか?

政府の税制上の優遇措置はない。というのもUAEでは現在、法人税も源泉課税もないからである。

最も注目すべき政策上の優遇措置は、産業部門に対して適用されており、これによって、産業ライセンスを持つ法人は、原料にかかる5%の輸入税の支払いを免除されている。

6.4 あなたの国と日本との間で相互的な租税協定はありますか?あればそれは投資家にとってどのような助けとなりますか?

日本とUAEの間には租税条約が締結されているが、これによる日本のUAEに対する投資への影響は少なく、条約の主たる受益者はUAE国営の国際航空会社2社である。

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著者略歴
クリストファー・ガンソン氏

アマレラー法律事務所 パートナー
アラブ首長国連邦 ドバイ
電話: 971 50 554 6205
メール: gunson@amereller.com
HP: www.amereller.com

クリストファー・ガンソン氏はアマレラー法律事務所のパートナーであり、同法律事務所ドバイオフィスに勤務。2009年より中東勤務。

ガンソン氏は日本語が堪能であり、氏の業務の大半が、中東地域での案件に対する100社以上の日本の多国籍企業の代理や助言である。この業務には代理店契約、販売店契約、戦略的投資と合弁会社、法規定の順守、従業員問題などの商取引が含まれる。

ガンソン氏は日本で中東ビジネス問題について日本語で定期的に講演を行う。氏の行う講演会のスポンサーには日本貿易振興機構(JETRO)、中東協力センター(JCCME)ドバイ日本商工会議所、三井住友銀行(SMBC)、海外投融資情報財団(JOI)などがある。

ガンソン氏の企業業務と商業業務に加え、氏は石油と天然ガス分野においてかなりの業務を行う。そして、アブダビ、イラク、イランにおける開発について、著者として、コメンテーターとして頻繁にニュースメディアに出演している。


About the author
 

阿部明子氏
アマレラー法律事務所 リーガルマネジャー

アラブ首長国連邦、ドバイ
電話: 971 4 432 3671
メール: abe@amereller.com
HP: www.amereller.com

阿部明子氏は国際法律事務所での15年の経験があるリーガルマネジャーである。2012年よりUAE勤務。日本企業ならびに多国籍企業の法的、管理上の面において彼らのビジネスをサポートしている。

阿部氏は数多くの複雑な金融取引、特にデューデリジェンスやクロージングなどのプロジェクトマネジメントで積極的な役割を担った経験を有する。

阿部氏は青山学院大学にてLLBを取得、キャンベル大学にてBAを取得、テンプル大学 ロースクール(Beasley School of Law )にてLLMを取得。弁護士資格を有さず、同法律事務所の弁護士の監督のもと業務に携わっている。